また一人、手下が死んでいく・・・。
手下と言っても、かつて5年ほど俺の配下にあっただけで、
2年前に訳あって地元から出ていき、しばらく音信不通になってた男(K)。
Kは、俺より少しだけ年上なので兄弟分に近いつきあいをしてやっていた。
その男の余命が3か月と聞いた。
「末期ガンだと?」
俺は、保険屋をしている男の胸ぐらを掴んだが、すぐ手をはなした。
保険屋の吊りあがった目が左右に動いたからだ。
俺も、あたりをすばやく見回したが、誰もこちらを向いていなかった。
みんな黙々と作業をしていた。
「それで・・」と話を続けさせた。、
「血を吐いたそうです。口からとケツからも。救急で病院に行き、診察したら、
腎臓や肝臓にガンができていて肺にも転移がみられると言われたらしいです」
「言われた?誰が誰に?」
「医者が奥さんにです」
「本人は知らんのか?」
「ええ、知っているのは、奥さんとボクとだけです。それと一砂さんと」
「子供は?」
「知らんと思います。」
「おまえは、なんで知ってんや?」
「ボクは保険屋ですので、Kさんの奥さんが保険のことで話しをしに来た時に聞いたんです・・・。絶対に内緒にしてくれと言われましてネ」
「俺に話してるで」
「それは、Kさんには一砂さんしかいないと思ったからです。」
「あいつとは、2年前から音信不通になってた」
「そうですか・・。此処から出て行ってからも一砂さんだけには連絡が入っているものと思ってました」
「おまえとは連絡なかったのか?」
「奥さんが保険に入ってくれていただけで、Kさんとは何も・・」
「わかった」
「あのぅ・・、絶対秘密にしてくださいね。ボク、奥さんに固く口止めされてますから」
「おまえには、守秘義務はないのか?」
「そんなぁ・・・」
「悪い悪い、よう教えてくれた。誰にも言わんよ」
作業中に、そのようなやりとりをしただけだったので、作業終了後にも、
保険屋を手まねきで呼んで詳しい話を念の為聞いた。
入院先とか、知っていることを全部話させた。
そのつど保険屋は、「ボクから聞いたと言わんといてくださいよ。秘密に
しておいてくださいよ」と付け加えた。
はて、どうしたものか、悩んだ。
実は、2週間ほど前に、Kが血を吐いて救急車で運ばれたことは、
その日のうちに俺の耳に入っていた。
その情報源は「誰にも言えない女」からだったので、しばらく動けなかった。
しかし、まさかガンだとは思わなかった。
そして、保険屋の情報も知ったところで、どうすることもできない。
見舞いになんか行けば、秘密を守らなかった保険屋の信用も台無しになるだろう。
おまけに、見舞いに行けば、本人が変に思って気づくかもしれない。
Kには、俺だけじゃなく親しい仲間もいる。
そいつらに、おしえてやることもできない。
そいつらに「秘密にしとけよ」と言っても、所詮無理な話だ。
俺が黙っているしかない。
見舞いに行きたい。顔もみたい。
行ってやりたいが・・・・。
手下と言っても、かつて5年ほど俺の配下にあっただけで、
2年前に訳あって地元から出ていき、しばらく音信不通になってた男(K)。
Kは、俺より少しだけ年上なので兄弟分に近いつきあいをしてやっていた。
その男の余命が3か月と聞いた。
「末期ガンだと?」
俺は、保険屋をしている男の胸ぐらを掴んだが、すぐ手をはなした。
保険屋の吊りあがった目が左右に動いたからだ。
俺も、あたりをすばやく見回したが、誰もこちらを向いていなかった。
みんな黙々と作業をしていた。
「それで・・」と話を続けさせた。、
「血を吐いたそうです。口からとケツからも。救急で病院に行き、診察したら、
腎臓や肝臓にガンができていて肺にも転移がみられると言われたらしいです」
「言われた?誰が誰に?」
「医者が奥さんにです」
「本人は知らんのか?」
「ええ、知っているのは、奥さんとボクとだけです。それと一砂さんと」
「子供は?」
「知らんと思います。」
「おまえは、なんで知ってんや?」
「ボクは保険屋ですので、Kさんの奥さんが保険のことで話しをしに来た時に聞いたんです・・・。絶対に内緒にしてくれと言われましてネ」
「俺に話してるで」
「それは、Kさんには一砂さんしかいないと思ったからです。」
「あいつとは、2年前から音信不通になってた」
「そうですか・・。此処から出て行ってからも一砂さんだけには連絡が入っているものと思ってました」
「おまえとは連絡なかったのか?」
「奥さんが保険に入ってくれていただけで、Kさんとは何も・・」
「わかった」
「あのぅ・・、絶対秘密にしてくださいね。ボク、奥さんに固く口止めされてますから」
「おまえには、守秘義務はないのか?」
「そんなぁ・・・」
「悪い悪い、よう教えてくれた。誰にも言わんよ」
作業中に、そのようなやりとりをしただけだったので、作業終了後にも、
保険屋を手まねきで呼んで詳しい話を念の為聞いた。
入院先とか、知っていることを全部話させた。
そのつど保険屋は、「ボクから聞いたと言わんといてくださいよ。秘密に
しておいてくださいよ」と付け加えた。
はて、どうしたものか、悩んだ。
実は、2週間ほど前に、Kが血を吐いて救急車で運ばれたことは、
その日のうちに俺の耳に入っていた。
その情報源は「誰にも言えない女」からだったので、しばらく動けなかった。
しかし、まさかガンだとは思わなかった。
そして、保険屋の情報も知ったところで、どうすることもできない。
見舞いになんか行けば、秘密を守らなかった保険屋の信用も台無しになるだろう。
おまけに、見舞いに行けば、本人が変に思って気づくかもしれない。
Kには、俺だけじゃなく親しい仲間もいる。
そいつらに、おしえてやることもできない。
そいつらに「秘密にしとけよ」と言っても、所詮無理な話だ。
俺が黙っているしかない。
見舞いに行きたい。顔もみたい。
行ってやりたいが・・・・。
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